医療機関における医療安全および業務効率化に資する医薬品・医療機器のトレーサビリティ確立に向けた研究班

研究代表者メッセージ

本研究事業によせて

美代 賢吾

国立国際医療研究センター
医療情報基盤センター
センター長

医療現場では、多種多様な医薬品、医療機器が用いられ、それらを間違いなく適切に使用することが日々求められています。平成30年度の「医療機関におけるUDI利活用推進事業(厚生労働省)」では、UDI(Unique Device Identifier:機器固有識別子でバーコードやRF-ID等で製品に直接表示)の院内での活用について検討され、その結果、有効期限切れや、使用した医療機器の把握において、UDIの活用は優れた効果があることが確認されました。

一方、課題として、その導入コストが挙げられており、これは、その利活用に当たってはシステム開発や改造などが必要となるなど、現在の電子カルテシステムの機能では、十分にUDIを活用できないことを示唆していると言えます。

UDIの活用場面は、偽薬防止、リコールの迅速化、使用後の診療報酬への反映、特定生物由来製品などのロットの長期保管など、製造から消費までの一貫したトレーサビリティの確立が想定されていますが、「院外の製造・流通」と「院内物流・使用」で、トレーサビリティは分断されており、これはいまだ実現していません。

このような状況の中、令和元年11月、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」が改正され、製造業者によるバーコードの貼付が義務化されました。猶予期間を経て、今後ほとんどすべての医薬品、医療機器には、バーコードやRF-IDによる識別子が印刷、貼付され、UDIを利活用ための環境は急速に整いつつある状況です。

そこで、本研究開発事業では、院内でのUDI利活用を促進するとともに医療機器製造業者・卸業者を含む院外の流通とも一貫したトレーサビリティを確保するための課題を抽出し、医療機関での普及を促進する方策について研究をおこないます。具体的には、各社の電子カルテの機能について具体的な調査をおこないます。そこから備えるべき機能および運用について、標準的な手順書を作成するとともに、電子カルテがパッケージとして備えるべき標準機能の提案を行います。標準的な利活用環境のもと、幅広くUDIが活用され、よりいっそうの医療の安全、業務の効率化・省力化が実現されることを目指します。